親子丼
鳥すきやき ぼたん(東京千代田)(2005/06/11)
東京都 千代田区 神田須田町 1−15
TEL:03-3251-0577
コメント:すきやきとは字のごとく鋤で焼くからすきやきというのか、それとも肉が好きだからすきやきというのか、語源ははっきりしないが明治初期に肉食が解禁になった折に日本人が肉を食べやすいように考案された調理法であることには間違いない。割り下で肉を焼くというのは割り下が肉の臭みを消して日本人になじみのある醤油系の味で食べやすくなるからである。しかしながらすきやきは近年すっかり影を潜めつつあり、牛肉のすきやきはもはや家庭でたまに食べる位で他の調理法に押される一方である。そういう状況の中で当店は鳥すきやき一筋の老舗とのこと、創業は明治33年で昭和初期の建物で座敷に上げて供するという、何とも風情のある店である。鳥すきやきは開設者は今回初めて食べる機会を得たが、割り下に当店独自の工夫をしているのか肉のうまみがよく引き出されていてうまかった。肉は胸、もも、それからつみれが用意されておりすきやきとして他に葱、豆腐、しらたきを使用する。肉をあらかじめ焼くことはせずに各食材を一気に鍋に入れ、割り下をかけて煮込む。ここが牛のすきやきと異なるのであろう、当店は炭火を使用した七輪で調理するが炭火だとじっくり火が通るためにこういう調理法が可能になるのであろう。肉がよく煮込まれたら完成である。割り下が鶏肉に合うようにかなり工夫されている(かなり濃いめのタレと見た)と炭火の効果なのであろうか、肉のうまみが素直によく引き出されており、すきやきとしてはもちろん、鳥料理としても逸品であるとよく理解できた。すきやきを楽しんだ後は飯が供されるが、この時点で親子丼を頼むと割り下と肉が残った鍋に溶き卵を入れ親子丼にしてくれる。今回はその経緯を知らず肉はかなり食べた後であったが、仲居さんが溶き卵を入れると七輪は撤去され後は余熱で調理、ということになった。鍋というよりはまさに鋤に近い浅底の鉄鍋であったが、炭火で加熱されていたため火を下げても余熱が十分で親子丼(の具)はすぐに完成した。この具を飯の上にかけて食べたところ、割り下が肉の調理でうまみを十分吸収していたので何とも言えない深い味わいの、うまい親子丼であった。こういう親子丼もなかなか粋でよいものである。