カスドース
湖月堂(長崎平戸)(2008/03/17)
長崎県 平戸市 浦之町
TEL:0950-22-227
コメント:カスドースとは南蛮菓子のひとつでポルトガル伝来とのことで400余年前になるという。一口大のカステラに黄身をかけ砂糖をまぶす、かつては松浦藩公の茶菓として門外不出の家伝の秘法だったとのこと。食べてみるとカステラのしっとりとした食感に黄身のコクとまぶした砂糖の甘みが相まってなんともいえない独特の風味である。南蛮とは語源をたどるといわゆる中華思想の東夷西戎北狄南蛮(とういせいじゅうほくてきなんばん)の南蛮であり南方の異文化民を指しているが、我が国では戦国期に渡来した西洋諸国が南方から渡来したので南蛮、と総称したとのこと。南蛮の蛮とは野蛮の蛮であるが我が国文化を比較優位におきつつも全く異なる世界の文化を南蛮として受け入れようとしたのは何とも興味深い。蛮ではあるとしながらもこのように食にせよ鉄砲や様々な文化を受け入れ消化していったのはまさに文化の相互作用というものであり我が国文化の基底に他ならない。こうして400余年前に伝来した菓子が今に伝わっているのは実に貴重なことであり、テンプラが天ぷらとして我が国食文化の代表となったのは大いなるパラドクスといえる。南蛮はやがて南蛮料理全般のことを指すようになり、その調理技法、すなわち揚げ物や酢漬けは南蛮伝来の新しい調理技法として定着していった。チキン南蛮はアジの南蛮漬けをヒントに考案されたともいわれているが、南蛮料理技法の原点ともいえる当品は文化的に実に奥深い。