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鴨すき
 鳥新(滋賀長浜)(2007/12/23)
 滋賀県 長浜市 南呉服町 8−26
 TEL:0749-62-0501
 コメント:鴨料理店(ただし冬期のみ)、天保五年(1834)創業とのこと。野生の真鴨を全国各地から仕入れているとの由。創業当初は当地で捕らえていたが禁漁区になったので店主が全国各地を回っているという。野生の真鴨は冬期のみ日本に飛来するため当品も冬季限定となる。鴨すきとは鴨のすきやき、ガラでとったスープを昆布で味を調えベースのスープとする。ここにご覧のように鴨肉と野菜を入れて鍋とするのだが、全体に薄味でスープには砂糖、醤油をごくわずかしか加えない。もっぱら食材そのものの味で楽しむという趣向である。すきやきなので玉子も供される。肉の中にペースト状のものが見えるがこれは頚軟骨を徹底して叩いてペーストにしたもの。これをつまんで鍋に入れることによりスープの味が引き立つという。さて鍋の開始だが野菜を中心にすすめていく。やさいをたっぷりと入れ、1回目のみ砂糖をひとつまみ加え、醤油もさっと一降りする程度に入れる。肉はすぐに火が通るので一度に入れてはならない。ムネ肉はしゃぶしゃぶ風にしていただく。鉄鍋なので熱伝導がよくすぐに火が通る。早速肉を食べてみたところ、えぐみやくさみが全くない、これまで食べてきた鴨とは全く別次元でありこれが同じ鴨なのかと驚いた。かむとしっかりした歯ごたえだがかといって固いというわけではない、ほのかなやわらかさである。脂身はあるがしみ出してくる脂ではない、味覚をとぎすませて味わうと始めてその存在を明らかにするが一度はっきりすると確かな存在感を主張する、そういう脂身である。しゃぶしゃぶ風はさっとひとくぐりさせるとやわらかさは残しつつも確かな弾力感に変わっていく。レバーもしかり、くさみやえぐみが全くない。野に生き抜き自然の恵みのみで成長したというのはこういうことなのかと尊敬の念を覚えた。こうした食材であるからこそ真摯に向き合って食べないと真価はわからない、開設者がその真価を今回本当に理解できたか自信はないが、少なくともわかったことは鴨が渡り鳥であるということ、すなわち各地を旅し生き抜くことができたもののみ持つ生命の力強さを感じ取ることができるかを試されているのではないかということである。また来年ここで味わう機会があるかもしれない、その時にはどう感じ取ることができるであろうか、食の道いよいよ遠しとも感じる一件となった。